先日、所属している某サロンにて、
現役漫画家先生の方から次のような話があった。
以前着いてた担当の編集者さんの話なんですけど……
なんていうか、いろいろと引っかかる人で……。
その具体的なエピソードのひとつとして
当人が描いたマンガについて評判を聞いた際に
思いのほか好評です
と答えられたとのことで、
それは言葉の選定としてどうなの?
ということらしい。
たしかに、作品の評価を自分の担当である編集に
「思いのほか」などと言われたらそりゃぁ
「ええぇ…(困惑)」とは思うわな……。
しかし、その一方でこんなふうにも考えた。
や、そうはいっても、仮にもその担当の方たるや、文章を生業にしている編集者様であらせられるわけですよね?
いわば文のプロなわけッスよね?
ひょっとしたらそこには、隠された別の意図もあったのでは……?
そんな思いが頭から離れず、今回はその真意を探るべく
色々と検証してみることにした。
もちろん、こんなのは誰に頼まれたわけでもないし
何ならその編集者さんとは何の面識もないわけで
この行為に何の意味があるのかと問われれば
全くありませんッ!(ニッコリ)
と元気いっぱいに答えるしかないわけだが……。
や、くれぐれも先日行ってた業務内容が、
処理結果が返ってくるまで時間かかる類の作業で
待ってる間めっちゃ時間持て余してたから
その合間に考えてたとか、決してそういう
理由ではないから!絶対にッ!!
……ここはあえてスルーしよう……
さて、前フリはここまでにして
検証してみた可能性を以下に列挙してみる。
- 編集者の語彙力の問題
- 言葉の意味を取り違えていた
- 方言だった
- これまで自分が担当した作家は売れないというジレンマを抱えていた
- 登場キャラに「思井ほのか」というキャラがいた
- ツンデレキャラ担当
- 今日の占いでラッキーワードになっていた
- LOVE PSYCHEDELICOの「Calling You」をヘビロテしていた
- 誘拐犯にそう言うように強要されていた
- 思いの外にはもともと「予想を上回る」という意味があり、当初の予定が妥当な数値であればむしろ称賛の言葉として用いることは正しい
- 「君の、少なからず違和感を覚えつつも波風を立てまいとその思いを飲み込む時に一瞬現れる戸惑いの表情、これを見るのが僕はどうしようもなく好きで堪らなくて、つい今日も心にもないそういう微妙と取れる台詞を吐いてしまうんだ……」みたいな性癖を持っていた
テメェはどんだけヒマな仕事してんだよ!!
語彙力の問題
やー、いきなり身もフタもないなこりゃ。
敢えて助け舟を出すとするなら
一口に語彙力とは言っても、
語りと文章のそれとでは別モノだったりすると
いうことでしょうかね。
や、言葉そのものを知ってるかどうかという
意味では一緒なんだけど。
ただ、語りの場合だとその場での瞬発力が
必要になるじゃないですか。
一方、文章であればいくらでも時間をかけて
推敲が出来るので、語りのような瞬発力はいらない。
だから、素晴らしい文章を書く人であっても
いざ話をしてみると、あらら……ってことはよくある。
これはまぁ、対面での緊張もあるので
慣れによっても変わってくるんでしょうが。
文章であれば適切に選択できた言葉も、
いざ話し言葉ではスムーズに選択できない。
これこそが、話し言葉と書き言葉での
語彙力の違いというやつの正体ですかね。
言葉の意味を取り違えていた
これも割と致命的。
本来の意味を取り違えてるというのは
やはり編集者という立場にいる以上、
そりゃふさわしくなかろうね。
これもね、良心的解釈をつけるとすれば……。
これは、たしか学生時代に国語の教科書で
随想として読んだ記憶があるんだが。
実は、言葉には「内包」と「外延」という
二面的な定義があってだなぁ。
内包というのは、その言葉の持つ共通な定義
対して外延が、その具体的な対象を指す。
「は?は??」
という感想なのはごもっともな話なので
具体的な例で説明する。
例えば、ここは林檎信者らしく
「りんご」って言葉があるじゃん?
これの内包的な意味っていうのは
いわゆるあの赤い果実そのものの定義。
いわゆる「りんご Wiki」で検索して
出てくるあの長文の説明ですな。
一方、これが外延的な意味の場合だと、
例えば、めっちゃりんごが大好きで
それはもう毎食りんご食ってる人が
いるとするじゃん?
その人にしてみればもう、
りんごってのはほぼ主食なわけじゃん?
つまり、その人の思考回路では
「りんご=主食」
の方程式が成り立ってるわけですよ。
しかし、一方でこれが全然違う人物
仮にここではBさんとしましょう。
Bさんは大食漢のため、毎日の食事は常に
タニシ長者盛りのご飯を食べてるとしますよね?
このBさんにしてみたら
「は?りんごが主食ッ!?
ちょっと何いってるかわからないです……
日本人の主食は、やっぱりコメでごわす!」
と熱弁をふるうことになるんですなぁ。
え?外延の説明がちょっと何言ってるか
わからないですか、そうですか……。
それでも無理やり説明をまとめますと、
要はその編集者さんにとっては
(どういう経緯でかは知らんが)
「思いのほか」という言葉の「外延的意味合い」が
最大級の賛美であったためその言葉を使ったのだが、
それを漫画家先生が「内包的意味合い」で捉えて
しまったため互いのギャップが生じてしまった、と。
先の例でいうなら
という、まことに意味不明な謎の方程式が
成り立ってしまったのだッ!!
な、なんかまだ2項目だっつうのに
思いの外長くなってしまったので次回へ続く……。
終
制作・著作
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